前記事で、読み書きに困難のある子どものためのデイジー教科書を紹介しました。
それは、日本語で勉強するための音声教材でした。「読み」に困難を感じるのも「日本語の読み」でした。
「日本語の読み書きは大丈夫」それなのに、英語になると「読み書きができない、英語が全然わからない」ことに気づく人たちがいます。
この「英語のディスレクシア」についてお伝えしようと思います。
それは、小学校英語の授業の様子をみていても、少し見えてくる気がします。
小学校の英語の授業の中身は?
「楽しんで国際感覚を身につける準備をしましょう。読み書きはしません。聞く話すを中心にします。」これが、コンセプトです。
以前、小学校の『国際コミュニケーション』(という名のほぼ英語クラス)の授業で
お手伝いをしていた時、授業は歌やゲームが中心でした。
歌や音を聞くゲームの落とし穴:苦手な子はどんな子?
『母語が英語の子供たちは、聞く話すから始めるんだから、日本の子供たちも『聞く 話すを中心にしましょう』ということになっています。
学校の授業の内容は、『歌やゲーム中心』になります。
先生が発音した単語のカードを取るゲーム。
歌を聞いて覚える。
『聞く』のが中心です。
まわりのみんなが覚えて楽しそうにしている横で、青ざめ「えーーーと」固まってしまう子がいます。Aくんです。
聞いただけで覚えることが苦手なAくんは、この「小学英語」の「聞く」がとても苦手なんです。文字も教えてもらっていないので、ヒントになる文字もありません。
『聞く話す』に焦点を当てた授業は、実は『聴覚優位』の子に焦点をあてた授業構成となっています。(聴覚優位:耳からの情報で理解がしやすいこと)
聴覚からの情報処理が苦手な子には、つらい授業になる可能性があります。
休み時間にAくんと話をすると、とって賢い子だとわかりました。Aくんが英語を勉強するときは、もっと視覚をつかった方法の方が効果があるはずです。
文字遊びでつまづく子どもたち:注意が必要です。
そして、Aくん正反対の子がいます。Bくんです。
聞いて覚えるゲームの時には、意欲満々だったBくん。この子は、ある時失速するタイプの子です。 その時とは、文字を導入した時です。
『書かない、読まない』といっても、現在の小学校の国際コミュニケーションの教科書には、『アルファベットを学ぼう』という単元があります。
A⇢B⇢C⇢Dと順番に並べよう。
絵の中に隠れているアルファベットを探そう。
まわりの子たちが、すいすいとカードをならべているそばで、ほとほと困っているBくん。『bとd』や 『pとq』の違いが分かりにくそう。
わからないのをみんなに知られたくないので、適当に並べて、そそくさと片付けて「できました!!」って言っています。
Bくんは、文字を扱った作業がとても苦手なのです。
クラスには他にもいろんなタイプの子がいます。こんな場面を見て、40人学級で同時に教えるって本当に難しいと思いました。
大人数でなるべく多くの子に学習の場を与えようと思えば、授業で可能なことは『見たり、聞いたり、触ったり、動いたり』いろんな感覚を総動員させて学習させてくことかな、と思います。
英語を学び始めてわかる「英語のディスレクシア」もある
Bくんが、当てはまると決まったわけではありませんが、彼のような子供たちは、「英語の読み書き」に困難を抱えている場合があります。注目したいのは、それまで彼らは、日本語での授業にはそれほどの困難がないことです。
日本語に読み書き困難を抱える児童は、5%と言われています。
英語圏のアメリカでは、読み書き困難を抱える児童は、15~20%と言われています。(統計により、数値は異なります。)
これは、言語の違いによるようです。
スペイン語圏では、英語圏より数値が低いようです。
次の表を見てください。『黄色』で示したグループに注目してください。
6年生まで、学習にとりたてて問題のないように見えた子が、中学で英語を学習し始めた途端、「あれれれれ、わからない、読めない、書けない」となる。それが、黄色に示したところにいる子どもです。
私は、現場にいる時、アルファベットゲームで予想以上に難しそうにしている子、耳からの英語がとっても苦手そうな子がとても気になりました。
私は、「早期英語教育」とかあまり好きではありません。私は、「まずは、母語」派です。
でも、一部の子供たちは「早い時期からの準備」があったほうが後々助かると思います。4,5年生ごろから、英語の授業を受ける準備をした方が良いという先生もいました。
それが、この黄色と赤の部分にいる子たちです。
早期英語教育とかではなくて、英語が必要な時に困らないように、学校の英語の授業に対応できるように、英語学習の準備が必要です。
英語のディスレクシア教育に特化した先生は、現在あまり数がいないと思います。第二言語のディスレクシア支援はは、第一言語のディスレクシア支援とも少し違います。
子どもの特性に合わせて、一番良い方法での支援を探っていくことが必要になると思います。